竹島問題の歴史

5.7.07

1905年 - 外務省通商局編纂「通商彙纂」 第50号

外務省が編纂した領事報告(海外各地に駐在する領事が、本国政府に定期的に送付した現地の通商経済情報や貿易報告)の集大成「通商彙纂」。鬱陵島が"雑"の欄に載っています。1902年のものと較べると、邦人の人数はむしろ減少しているようですが、逆に職種が多岐に渡り、官吏、医師までもが居住していたことが分かります。また、前年12月末の(帰国せずに島で新しい年を越した)人口が260人となっていることや、農業に従事している者がいることから、邦人の定住化が進んでいた様子が伺えます。ただし、四月から六月にかけて人口が増加しており、非定住型の邦人も又多くいたようです(約1/3)。さらに、輸出入の品目が増加しています。
なお、"ニ、 同島の輸出入品"の項の中で、"ランコ島"と言う名称で、竹島(Liancourt Rocks)が言及されています。"「トド」と称する海獣"を"昨年頃より鬱陵島民之を捕獲し始めたり"とありますが、この"鬱陵島民"に韓国人が含まれるか否かは不明です。ただし、この項において他に韓国人に関する記述が一切無いことから、このトド猟についても基本的に邦人の活動について著していると考えるのが自然でしょう。
原文はこちら


鬱陵島現況

人口、本邦人の業務、輸出入品

(三十八年七月三十一日附在釜山駐在領事館報告)

本年に於ける鬱陵島の情況を調査したること左の如し

一、 人口 人口は昨年十二月末の調査に戸数八十五戸人口二百六十人内男百七十五人女八十五人なりしに本年六月末に於いては戸数百十戸に及び人口も三百六十六人となりたり、今本年四月より六月迄戸数並人口の増殖し行く跡を窺はんが為めに左に其統計を挙げん、

          四月         五月          六月

戸 数      八九         九八         一一〇

人 男     一五五        ニ〇六         ニ一九

口 女       九六        一三五         一四七 

合計       ニ五一        三四一         三六六

ニ、 本邦人の業務 

次に同島に於て本邦人が如何なる業務に従事しつつありや又如何なる業務が漸々増加し行くの傾向あるやを知らんか為めに左に本年四月より六月に至る迄職業の種類に関する統計を掲ぐべし但し各種の職業中同一人に於て兼業を為せるもの少なからず

職業名            四月         五月          六月
官   吏           三          三            三

医   師           一          ニ            ニ

輸 入 商           八          八            八

輸 出 商           五          五            七

仲 買 商          ニ一         ニ一          ニ一

陶 器 商           ニ          ニ            ニ

荒 物 商           〇          一            一

石 油 商           一          一            一

材 木 商           ニ          ニ            ニ

大   工           七         一二           一二

指   物           三          三            三

木   挽          四三         五〇          五二

桶   屋           〇           〇            一

鍛   冶           五          五            五

日   雇           ニ          ニ            ニ

飲 食 店           一          一            一

豆 腐 屋           ニ          ニ            ニ

農   業           ニ          三            三

潜 水 業           〇          〇            ニ

漁   夫          一五         ニ七           三一

海   士           〇         三ニ           三ニ

船   乗           〇         三一           三一

雇   人           ニ          ニ            ニ

僕   婢           ニ          一            一

和洋裁縫           ニ          ニ            ニ

洗   濯           一          一            一

細 工 匠           一          一            一

炭   焼           一          一            一

郵便受取所          一          一            一

合計 

  
三、 同島の輸出入品 

次に本年四月より六月に至る同島輸出入の情況を観察する為め昨年の同期に於ける輸出入と比較すること左の如し
                      三十八年四月より     三十七年四月より

                       六月迄輸出額         六月迄同上       比較減△  

品      名   単位       数量       価格           数量       数量の比較

大      豆    石      ニ一四    一、六〇五         四七〇       △ニ五六

槻      材    才   六二、一一八   三、七二七     三八、三八二     ニ三、七二六

乾      鮑    斤    四、七七〇    四、七七〇           --       四、七七〇

海 獣(トド)皮    貫    一、ニ七五    一、ニ七五         八〇〇         四七五

同  上  油     斗      四一四       五三八          ニ〇         三九四

同 上 〆 糟    斗      八〇〇       一六〇           --         八〇〇

合      計                   一二、〇七五


此他に昨年四月より六月までの期間に薪千五百貫、茸二十六貫八百目海苔五十二貫、●一樽、食鹽(しお)三百四十七俵、栂材一萬六千三百八十七才、韓銭二百貫文、黄柏皮八百貫鰑(するめ)八百五十貫海獣肉八百貫の輸出ありたり

「トド」と称する海獣は、鬱陵島より東南約二十五里の位置にあるランコ島に棲息し昨年頃より鬱陵島民之を捕獲し始めたり。捕獲期間は、四月より九月に至る六ヶ月間にして、漁船一組に付き猟手及び水夫等約十人にて、平均一日約五頭を捕獲すと云う。而して、本事業に従事する者三十人あり漁船三組あり又「トド」一頭に付き現今市価は平均三円位なり。

鮑の採取高は本年四月熊本県民吉村某潜水器二個を以て採取に従事し潜水器一個に付一日生鮑平均約三百斤なり又三重県県民濱口某は本年五月漁船二艘に海士三十二人水夫十人を率いて其採取を為し一日平均約五百三十斤内外を採取す生鮑乾上の為斤目の減少は凡そ十分の九にて生鮑三百斤乃至五百三十斤を乾上ぐるときは三十斤及至五十三斤に減すると云ふ同島への輸出は大概釜山よりす今左に前掲期間に輸入せられたる品目数量価格を挙げ昨年四月より六月に至る期間に於ける輸入と比較せんと欲す

             三十八年四月より     三十七年四月より

             六月迄輸入額         六月迄同上         比較減△  

品      名     数量       価格           数量      数量の比較

精    米      一ニニ    一、六五ニ         四七〇       △ニ五六

糯   米 石      一        二五           〇            〇

酒     同      一七        五二          一〇            七

焼   酎 同     ニ〇        八三           〇            ニ〇

石   油 箱     一八        六三          ニ〇            ニ

砂   糖 斤    ニニ〇        二五         一四〇           八〇

白 木 綿 疋     五七五      八〇五         一ニ〇          四五五

白綾木綿 同     四二      二五二          三六            六

綿   糸 丸      五        一二           --            五

綿      貫      六        一二           --            六

織   物 反     一五        三〇           --           一五

鉄      貫     五八        一九         ニニ五         一六九

蓆   叺 枚    二八〇       ニ一        一〇一〇         七八〇

燐   寸 箱       一         六            一            〇

陶   器 個      不詳       一〇         五〇〇          不詳

食   塩 俵      七〇        一五        四五〇         三八〇

醤   油 石       六         九            九            三

素   麺 箱      一〇        二五           --          一〇

合    計               三、一一六

此他三十七年六月より十二月迄の期間に空瓶七百五十本巻煙草百五十本縄百束刻煙草三貫目、杉皮三百五十斤韓銭三百四十五貫文畳四十枚支那米五石六斗酒糟十三石ニ斗酢酸四升の輸入ありたり

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